男性の代表的な泌尿器疾患
前立腺肥大症
症状
- トイレが近い
- 尿が出にくい(勢いが弱い)
- トイレが我慢できない
前立腺は膀胱の下にあり、尿道を取り囲むようにしてある臓器で、主に精液の一部を作っています。加齢と共に前立腺が肥大してくると、尿道が圧迫され、尿勢低下、尿線途絶、残尿感、頻尿、尿意切迫感など様々な症状を呈してきます。症状の有無や程度について確認し、簡単な血液検査や尿検査を行ったり、直腸診で肛門から指を入れて前立腺の大きさや硬さを調べたり、尿の勢いをみる検査や残尿測定をして前立腺肥大の程度を評価します。
治療としては、まずは薬物療法を行います。主にα1ブロッカーと呼ばれる前立腺の通りをよくする薬を中心に、前立腺を縮小させる薬、血流を改善させる薬などの内服薬の調整を行い、症状の改善を図ります。それでも効果が不十分な場合や、膀胱内に多量に尿が溜まっているのに尿が出せない状態(尿閉)を繰り返すときは、手術(経尿道的前立腺切除術:TUR-P)を検討しなければなりません。また、尿閉になった場合には、一時的に膀胱内に管を入れる導尿や尿道カテーテルの留置が必要になります。
前立腺炎
症状
- 会陰部の痛み・不快感
- 残尿感
- 頻尿
前立腺に炎症を起こした状態で排尿時の痛み、残尿感、会陰部の不快感・違和感などの症状を呈します。急性と慢性があり、急性の場合は細菌が原因となり、症状は激しく、高熱を伴います。慢性のものは、デスクワークや運転など座位の時間が多い仕事の方に多くみられます。肛門から前立腺を触診(直腸診)をしたり、尿検査や採血を行い、薬物療法を行います。急性期の場合は抗生剤の内服や点滴が必要になることもあります。
過活動膀胱
症状
- トイレが近い
- おしっこしたくなったら我慢ができない
過活動膀胱とは、突然尿意を催したり、我慢が難しくなったり、時には間に合わなくて漏れてしまったりというような症状を呈する疾患です。膀胱が勝手に収縮したり、過敏な状態になっているため、尿が充分溜まっていないうちに、急に尿意が起こります。
診断
受診されたら、まずどのような症状があるのか確認し、尿検査をして感染やがんなどの疾患がないか調べたり、超音波検査で腎臓や膀胱に異常がないか確認したり残尿測定を行います。また、水分を摂りすぎることで頻尿になっていないかあるいは実際にどのくらいトイレに行っているかを客観的に評価するため、排尿日誌をつけていただくこともあります。
治療
治療としては、主にβ3作動薬や抗コリン薬などを使用して膀胱の収縮を抑制したり、膀胱を弛緩させて症状を改善させます。他に膀胱訓練や骨盤底筋体操などの行動療法があります。
神経因性膀胱
症状
- トイレに行ってもすっきりしない
- うまく尿が出せない
- 尿が漏れる
脳や脊髄などの神経の障害が原因で、尿を溜めたり(蓄尿)、尿を出したり(排尿)することがうまくできなくなった状態です。中枢性(脳血管障害、パーキンソン病、脊髄損傷など)と末梢性(糖尿病、直腸の骨盤内手術後)があります。放置しておくと尿路感染症や腎機能障害を引き起こす場合があるので早めに受診することが大事です。
診断
問診で、尿意の有無、お腹に力をして排尿(腹圧排尿)していないか、残尿感がないかをなどの症状を確認し、尿検査や残尿測定を行います。
治療
まずはα1ブロッカーと呼ばれる排尿をしやすくする薬やコリン作動薬などの薬物療法を行います。それでも、尿閉をきたしたり、残尿量が多かったり、尿路感染を繰り返す場合、尿道カテーテル管理や間歇的自己導尿の適応となります。
尿路結石
症状
- 急激な背中の痛み
- 血尿
尿路結石とは、尿路(腎臓から尿道まで)に生じる結石のことで、存在する結石の部位によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼ばれています。結石のほとんどが腎臓で作られますが、腎臓にあるうちは、無症状のことが多いです。尿とともに尿管に落ちてきて尿路をふさいでしまうと背中や脇腹(側腹部)や下っ腹(下腹部)に激しい痛みが出たり、血尿が出ることがあります。この状態を放っておくと腎機能が低下することや、尿路感染を引き起こして、高熱が出て重篤な敗血症に至ることもあり、早期に受診することが大事です。
診断
検査は、尿検査、血液検査で血尿の有無や感染兆候があるか腎機能の悪化がないかを調べ、超音波(エコー)検査、レントゲン、CTといった画像検査で結石の位置、サイズ、水腎症や尿管拡張(尿路の閉塞を表す)の程度や有無などを評価します。
治療
症状がなく、尿路の閉塞や感染も引き起こしていない小さな結石に対しては、基本的には治療の必要はありません。また、大きさが1cm未満の尿管や膀胱に落ちてきた結石の多くは、尿と一緒に自然に排石(結石が体外に出ること)が期待できるため、十分な水分摂取と結石を出しやすくする薬物療法(排石促進薬と鎮痛薬の内服)で、排石を待ちます。結石の大きさが1cmを超え、自然に排石することが困難と思われる場合や、1cm未満の結石でも1ヶ月以上経過観察しても、結石が全く下に降りてこない場合は、薬物療法だけではなく、体外から衝撃波を加えて結石を砕く体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や、尿道から内視鏡を入れて直接結石を砕く経尿道的尿管結石破砕術(TUL)などの手術が必要です。
悪性腫瘍(がん)
泌尿器科領域の悪性腫瘍には、男女ともに発症しうる腎がん、腎盂尿管がん、膀胱がんと、男性特有の前立腺がん、精巣腫瘍、陰茎がんがあります。
腎がん
腎がんは腎臓にできる腫瘍で、初期の段階ではほとんど症状がなく、健診で受けた超音波検査でたまたま発見されるケースが多くなっています。進行すると血尿、腹部のしこり、発熱などの症状が現れることもあります。
腎盂がん、尿管がん、膀胱がん
腎臓で作られた尿が膀胱に行くまでの通り道にできる腫瘍です。痛みを伴わない血尿(無症候性血尿)が出ることも多く、健診で尿潜血を指摘されたり、尿細胞診と呼ばれる検査でがんを疑う異型細胞が検出されることもあります。超音波やCTなどの画像検査も有用です。
前立腺がん
症状
- PSA高値を指摘された
- 血尿が出る
初期の前立腺がんには自覚症状がないことが多く、症状が出た場合でも前立腺肥大症の症状によく似ています。さらに進行すると血尿や骨転移による腰痛などが起こります。
診断
診断にはPSA(前立腺特異抗原と呼ばれる腫瘍マーカー)の採血が有用です。健診や検診でPSAを指摘された方は、精密検査が必要であり、肛門から指を入れて前立腺を触診する直腸診、PSAの再検、MRIによる画像検査を行い、がんが疑わしい際は、前立腺生検(組織を採取してがんの有無を調べる)によって確定診断を行います。
治療
治療法は、ホルモン療法、手術、放射線治療などがあります。がんの発生部位や悪性度、広がり具合、患者さんの年齢・状態などさまざまな状況を総合的に判断して適した治療法をご提案させていただきます。当院ではホルモン療法を行なっておりますが、手術や放射線治療を希望される場合は、専門医療機関をご紹介します。
精巣腫瘍
陰嚢内にある精巣にできる腫瘍で、他のがんと異なり、20〜40代の若い世代に発症することが多いです。陰嚢内容の無痛性腫瘤や硬結(痛みを伴わないしこり)を呈することが多く、採血で腫瘍マーカーを調べたり、超音波やCTによる画像検査が有用です。痛みがないため放置して進行してしまうケースもあり、片側の精巣が腫れる、急激に大きくなる、硬いしこりがある場合は早めに受診してください。
いずれのがんも早期診断早期治療が大事であり、当院で検査してがんが見つかったり、疑わしい場合は、さらなる精査や治療のため、速やかに大学病院や近隣の医療機関へ紹介させていただきます。