女性の代表的な泌尿器疾患
膀胱炎
症状
- 排尿時に痛みがある
- トイレが近い
- 残尿感
- 血尿が出る
尿道から膀胱の中に細菌が入り、炎症を起こした状態で、トイレが近い、排尿時に痛み、残尿感が特徴的な症状です。その他、むずむず感、下腹部の違和感、尿が濁ったり、血尿が出ることもあります。さらに症状がひどくなると、腎盂腎炎といって背中が痛くなったり、38度以上の発熱をきたすことがあります。
症状を悪化させないためにも、膀胱炎を疑ったら早めに受診することが大事です。尿検査で白血球や細菌を確認し、抗菌薬(抗生剤)で治療を行います。
腎盂腎炎
症状
- 背中が痛い
- 熱がある
- 排尿時に痛みがある
- トイレが近い
- 残尿感
腎盂は腎臓で作られた尿がたまる部分です。腎盂腎炎は、主に尿道から入ってきた細菌が膀胱や尿管を通じて腎盂で炎症を起こしている状態です。排尿時痛、頻尿、残尿感といった膀胱炎と同様の症状が現れ、38℃以上の発熱や背部痛、倦怠感などの症状を呈します。
診断
背中を叩いたり、尿検査で膿尿や細菌の有無や血液検査で炎症反応の有無を確認します。さらに超音波で、尿路の状態を確認することもあります。
治療
抗菌薬(抗生剤)の点滴や内服治療を行います。悪化している場合には入院による治療が必要なため、連携している医療機関をご紹介します。
過活動膀胱
症状
- トイレが近い
- 急に尿意をもよおす
- トイレを我慢するのが難しい
急に尿意をもよおしたり、何回もトイレに行ったり、我慢が難しくなったり、時には間に合わなくて漏れてしまったりというような症状を呈する疾患です。膀胱が勝手に収縮したり、過敏な状態になっているため、尿が充分溜まっていないうちに、急に尿意が起こります。
診断
症状の有無や程度について確認し、尿検査をして尿路感染やがんなどの疾患がないか調べたり、超音波検査で腎臓や膀胱に異常がないか確認したり、残尿測定を行います。また、水分を摂りすぎることで頻尿になっていないかあるいは実際にどのくらいトイレに行っているかを客観的に評価するため、排尿日誌をつけていただくこともあります。
治療
治療としては、薬物療法があり、β3作動薬や抗コリン薬などを使用して膀胱の収縮を抑制したり、膀胱を弛緩させて症状を改善させます。他に膀胱訓練や骨盤底筋体操などの行動療法があります。
神経因性膀胱
症状
- トイレに行ってもすっきりしない
- うまく尿が出せない
- 尿が漏れる
脳や脊髄などの神経の障害が原因で、尿を溜めたり(蓄尿)、尿を出したり(排尿)することがうまくできなくなった状態です。中枢性(脳血管障害、パーキンソン病、脊髄損傷など)と末梢性(糖尿病、直腸や子宮などの骨盤内手術後)があります。放置しておくと尿路感染症や腎機能障害を引き起こす場合があるので早めに受診することが大事です。
診断
問診で、尿意の有無、お腹に力をして排尿(腹圧排尿)していないか、残尿感がないかをなどの症状を確認し、尿検査や残尿測定を行います。
治療
まずはα1ブロッカーと呼ばれる排尿をしやすくする薬やコリン作動薬などの薬物療法を行います。それでも、尿閉をきたしたり、残尿量が多かったり、尿路感染を繰り返す場合、尿道カテーテル管理や間歇的自己導尿の適応となります。
尿失禁
症状
- 咳やくしゃみで尿が漏れる
- 階段登る時に尿が漏れる
尿失禁には、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の2つのタイプがあります。切迫性尿失禁は過活動膀胱の時に起こる病態で、一方腹圧性尿失禁は、出産後や40代以降の女性に多く、お腹に力が入った時に尿が漏れます。骨盤底の筋肉が弱くなっていることが原因で、加齢とともに女性ホルモンが低下することで結果的に筋肉が緩んできます。
治療
治療としては、骨盤底筋体操や減量による行動療法、薬物療法があります。それでも効果が乏しい時は、中部尿道スリング手術と呼ばれる尿道の下にメッシュ状のテープを通して、尿道の支えを強化する手術があります。
骨盤臓器脱
症状
- 脱出感、下垂感
- 尿が出にくい
- 下着にこすれて血液が付着
加齢や出産が原因で骨盤底筋が緩むことによって膣から骨盤内臓器が飛び出してくる症状です。膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤などがあります。初めは何かが下がっているような感じがあり、さらには膣の入り口にピンポン球のようなものが触れるようになります。進行すると、頻尿、尿漏れ、残尿感、尿が出にくいなどの症状が出てくることがあります。
診断
内診で程度を確認し、骨盤底筋体操を行ったり、婦人科でリングペッサリーを挿入してもらいます。また、手術療法があります。
尿路結石
症状
- 急激な背中の痛み
- 血尿
尿路結石とは、尿路(腎臓から尿道まで)に生じる結石のことで、存在する結石の部位によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼ばれています。結石のほとんどが腎臓で作られますが、腎臓にあるうちは、無症状のことが多いです。尿とともに尿管に落ちてきて尿路をふさいでしまうと背中や脇腹(側腹部)や下っ腹(下腹部)に激しい痛みが出たり、血尿が出ることがあります。この状態を放っておくと腎機能が低下することや、尿路感染を引き起こして、高熱が出て重篤な敗血症に至ることもあり、早期に受診することが大事です。
悪性腫瘍(がん)
泌尿器科領域の悪性腫瘍には、男女ともに発症しうる腎がん、腎盂尿管がん、膀胱がんと、男性特有の前立腺がん、精巣腫瘍、陰茎がんがあります。
腎がん
腎がんは腎臓にできる腫瘍で、以前は血尿や背部痛症状で見つかることが多かったのですが、最近では超音波の検診などで早期に見つかることが多くなってきました。早期発見できれば治療成績は良好であり、健康診断などの検査をお勧めします。
腎盂がん、尿管がん、膀胱がん
腎臓で作られた尿が膀胱に行くまでの通り道にできる腫瘍です。血尿が出ることも多く、健診で尿潜血を指摘されたり、尿細胞診と呼ばれる検査でがんを疑う異型細胞が検出されることもあります。超音波やCTなどの画像検査も有用です。